発売日 : 2011/08/10
価格 : ¥3,150(税込)
規格番号 : WPCL-10967
曲目
1. 久しぶりだね
2. 旅の途中
3. Natalie
4. Sun Sunny Friend
5. 我愛□
6. 夢と逸れて
7. It's So Simple
8. Nonkey Tosan
9. 8月
10. フルサトヲモフ
11. ある朝目が覚めたら
12. 強気な女
13. ふり返れば晴れ
14. センチメンタルシティ
Guest
・竹内まりや(Track 3)
・・・Background Vocal
・小坂忠(Track 2)
・・・ Vocal
・浜野謙太(SAKEROCK)(Track 8)
・・・ Trombone & Rap
移りゆく時代に変わらないセンチサウンドを閉じ込めた全14曲を収録。
やっとかめ(八十日目)とは、名古屋弁で本当に久しぶりだねという意味を持つ。
25年ぶりのオリジナルアルバムとなる本作品は、マイペースにしかし着実に音楽活動を続けるセンチならではのタイトルとなった。
結成38年、今まで応援し続けていただいた皆様へやっとかめ。
ニュー・アルバム発売!
『やっとかめ』センチメンタル・シティ・ロマンス
センチメンタル・シティ・ロマンスが何と25年ぶりとなるオリジナル・アルバム『やっとかめ』を発表した。25年ぶりというのには正直ビックリだが、その間にビデオだとかセルフ・カヴァー・アルバムなどが出ていたので、それほどのブランクがあったとは思えなかった。が、調べて見ると確かに『夏の日の想い出』(1986)以来のオリジナル新作ということになる。ちなみに、アルバム・タイトルの“やっとかめ”(八十日目)とは名古屋弁で久しぶりという意味だとか、判り易く言えば“やっとこさ”ってところだろうか。
で、そのセンチの待望の新作はこれまでのどのアルバムとも趣を異にしている。これはごく個人的な感じ方なのかも知れないが、ソニー時代、キティ時代、コロムビア時代、ポリドール時代、それぞれに名作を残して来たが、あらゆるセンチのアルバムの中でもこの新作が一番好きになりそうだ。
考えて見るとセンチは、真の意味での日本のロックの黎明期である70sに登場したバンド群の中でも一際異彩を放っていたグループだったように思う。まるで先達のはっぴいえんどからバトンを渡されたように解散の翌年に登場した彼らは、当時のウエスト・コースト・サウンドのエッセンスをふんだんに取り入れながらも、それを巧みに日本的情緒に昇華して、なお且つ見事に日本人的心情を織り込んで表現して見せたものだった。また、擬音語(擬声語)、擬態語を自在に駆使したユニークな日本語表現がいかにも斬新で、ひどく魅せられたことを覚えている。
カラッと乾いた感触のファンキーなギター・サウンドにビーチ・ボーイズ、ポコ、イーグルス、CSN&Yにも通じるヴォーカル・ハーモニーといった表出した音楽面だけでなく、曲名からもそんなウエスト・コースト好きの一面を窺い知ることが出来た。例えば、「ムーンシャイン&サンシャイン」(『ホリディ』1976収録)は、もしかしてヤングブラッズの「Moonshine Is The Sunshine」?、「太陽の讃歌」(『歌さえあれば』1979収録)はグレイトフル・デッド?でも「ハイウェイ・ソング」(『シティ・マジック』1977収録)はまさかフリーじゃないよな?なんて感じの楽しみ方が出来たりもしたもんだ。しかも、その演奏たるやピカ一のクォリティ、完成度を誇っていた。同時代にデビューした僚友でもあるめんたんぴんの佐々木忠平が或る日、センチのライヴを見ながら“やっぱセンチはムチャ上手いんな、俺らとはレベルが違おうわ”なんてしみじみと語っていたことを思い出す。実際、初期のアルバムを聴いても、凝ったリズム・アレンジや、一筋縄ではいかない構成力、演奏力、コーラス・ワークの見事さに、今更ながら脱帽してしまう。そう言えば、デビュー・アルバムをプロデュースする筈だった細野晴臣が“もはやプロデュースする余地がない完璧なスタイルを創っていた”という一文を同作に寄せていたものだ(ちなみにクレジットはセンチメンタル・ロマンティストだった)。
勿論そんなセンチもイイ!が、今度のセンチには、むしろ彼らのトレード・マークでもあったスタジオ・ワークにおける繊細なまでの完璧さ、スキの無さとは相反した魅力にしてやられてしまった。揺るぎのないバンド・サウンドには変わりはないものの、一発録り、或いはスタジオ・ライヴ的なラフな魅力に溢れている。豪快で骨太、およそ今までのスタジオ・アルバムとは異なった味わいがある。ドッシリと構えた堂々とした演奏には“37 Years Young”の気概と風格が漲っている。個人的に言わせてもらえれば、デビュー以来ずっと待ち望んでいたのはこんなセンチだったのかも知れないとマジに思う。だからこそ、何だかやたらに嬉しい。以前なら、演奏完璧!上手すぎ、アレンジ凝り過ぎ、ライヴで再現するの大変そう、なんて勝手に思っていたものだが、今回はそんな心配もない。
洒落たジャジーなオープニング・ナンバーの「久しぶりだね」は“元気だったかい?”なんて声掛け以上に、本人たちの方が元気そうで、祝祭さながらにいかにも楽しげだ。道草ばかりしていたからまだ旅の途中なんて歌う中野督夫作の「旅の途中」は、かつて黄色いセンチ号に乗って次の町へと走り去って行った姿の記憶とダブる。バンド、いやアーティストにとって永遠のテーマでもある“Keep On Truckin'”というか股旅だ。名作『ほうろう』のヴォーカル・トラックを入れ直した『HORO2010』で話題を集めた小坂忠がデュオ・ヴォーカルで参加しているのも注目したい。そして「Natalie」は、センチがバッキングを務めた竹内まりやの9枚目のシングル(『PORTRAIT』に収録)のカヴァー・ヴァージョン。ここではオリジナルのアレンジを手掛けた告井延隆がリードを取り、竹内まりやがお返しとばかりに、バッキング・ヴォーカルで参加しているので、これも話題必至。かと思えば、李香蘭(山口淑子)、渡辺はま子辺りのそこはかとない中国ムードを醸し出している「ウォ・アイ・ニー」も面白い。異色作は野口明彦がヴォーカルを取り、浜野謙太のラップをフィーチャーした「Nonkey Tosan」だろうか。トーサンとバックに入る呟きも印象的だし、何やらアラン・トゥーサンとホンキー・トンクを掛け合わせたようなタイトルにも惹かれる。ピアノとスライド・ギターを軸にちょっとニューオリンズっぽい食ったリズムの細井豊作の「フルサトヲモフ」は、心象風景を綴ったようなしみじみした情感を湛えた詩と、まるで戦前の児童雑誌「赤い鳥」を読んでいるかのようなカタカナ表記が何とも言えない。ラストを飾る中野督夫の「センチメンタル・シティ」は、「旅の途中」同様に名作「ハイウェイ・ソング」の続編のような作品。「旅の途中」と対をなしている感じもするし、名作「うちわもめ」の一節が出て来る辺りも心憎い。ホーム・タウンへ戻って、“股旅”に出る旅のスパイラルを感じさせるところもイイ!
ところで、先日ひょんなことからバディ・ガイのグラミー受賞最新作の『リヴィング・プルーフ』(2010)を聴く機会があった。そのオープニングを飾っていたのが奇しくも「74 Years Young」なる楽曲。シブイ歌に年輪を感じさせる味わいアコースティック・スライドの響き。“ウーム、年齢からしても然もありなん”などと思って聴いていると、とんでもない!中盤に差し掛かる辺りから、エレクトリック・ギターに持ち替えて、まるでとち狂ったように暴走し始める。“おいおい!オッサンいくらなんでもそりゃないだろう!やり過ぎだって!曲調も何にもメチャクチャじゃん、やめなさいっ!ってば”と言いたいが、一向に止める気配もなくやみくもに暴走しっ放し。なるほど!「74 Years Young」とはそういう意味だったのかと…。そんなバディに比べたらセンチはまだ若い、これからもますます“やんちゃ”に傾いて頑張って欲しいものだと思う。
2011年07月
Stay High Always!
(HIDEKI MASUBUCHI/増渕英紀)
◆増渕 英紀(ますぶち ひでき、1952年1月29日 )
音楽評論家、コラムニスト。
ブログ:http://ameblo.jp/stay-high-always/